ジュリアン・シュナーベル(画家)との奇妙な出会い。
或る画廊のオープニング・パーティで、作品を眺めていると、写真家の安斎重男氏がやって来て、「シュナーベルが、あんな面白い日本人が日本に居るとは思わなかったって。翌日、箱根に行ってる間中、お前の事を話していたぞ。よっぽど気にいったらしいから、手紙を書いてやれよ。」と言った。
一瞬、「シュナーベルって、ジュリアン?」と訊ね直す。思い返すと可笑しい。
あれはニヵ月位の銀座で行われた新進彫刻家Aのニ次会の会場でのことだった。
友人の画家・堀内康司氏と立ち話をしていた時、会場の入り口付近が騒がしく為ったので、視線を向けると、若い外人夫妻が入って来るのが見えた。人々が何か囁き始めたが、私には如何してなのか分からない。その外人の男と視線が合うと「ヤァ」と言った表情で、軽く、私に向って右手をあげたので、私も自然に「ヤァ」という感じで右手を挙げて答えた。
私たちの様子を見ていた堀内氏が、「知り合いか?」と問うので、「知らない」と答えると驚いた様子で、「ジュリアン・シュナーベルだよ。アメリカの若手の画家で有名な。今、世田谷区立美術館での『カブキ展』の為の制作に来日中だ。本当にお前、知らないのか?」と問われても知らないものは知らない。
「何処かで逢った事がある人ではないのか。お前を呼んでるぞ、行ってやれよ」という言葉で、彼の方を見ると、写真家安斎重男と話をしながら、「ヤァ」と微笑みながら、再び手を挙げているので、彼のところに行った。
「ボン・ソワール」から二人の会話は始まったのだろうか。
話し始めると隣に座っているシュナーベル夫人が驚いた表情で見ている。
それはそうだろう、会話はフランス語とスペイン語と英語とが一つのフレーズの中で混じりあいながら話すのだから。
面白いようにお互いが話す混合語が通じ合う。
何故か初対面のシュナーベルとは気が合った。夫人に安斎氏が私の事を説明している。なんと言っているかは分からない。
結構、長い間、話したのではなかったか。
「また逢おう」と言って別れた。
「随分、気が合っていたみたいだ。本当に初対面なのか?」と堀内氏。嘘も本当も無い。「初対面だよ」
「へーえ、凄いな。初対面で、世界のジュリアン・シュナーベルと対等にあれだけ話せるだから、テンドウも世界的だね。奴も驚いたことだろう。」
どんなに綺麗な発音でも、相手の言葉が全く通じない事がある。本当に「気」が合わない人々が居る事を知ったのは33年前、、初めてスペイン北部の深山で修業していた頃のことだ。
「シュナーベルがいずれお前と仕事をしたいと言っていたぞ。」と安斎氏が親切に教えてくれた。在り難い事だ。もう私もこの画家の仕事を知っている。
いずれこの世界の何処かで、必ず一緒に仕事をすることに為る事は、初めて「聲」を交わした瞬間から分かった。
1989年10月初旬、マドリーに着いた時、彼が一週間前まで、マラガに居たことを知った。帰国後、彼に手紙を書き送ったがしかし、返事は未だ無い。
あれから16年、今、ジュリアン・シュナーベルは絵画から映像へと表現の世界を替えて映画監督。
『バスキア』、『夜になる前に』等の映画作品を制作して居る。
さて、何処で、何時、如何、ジュリアン・シュナーベルと出会うのか、楽しみな事だ。
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