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2006/01/23

 犬塚 尭(詩人)さんの問いの言葉。

 天童さん、地球を止めた事がありますか?と突然、詩人 犬塚 尭さんが言われた。

 今、犬塚 尭詩集『折り折りの魔』(紫陽社刊 1979年5月10日第一刷)を開き、扉のページに、私宛に書いて下さった献辞

 もし鳥が飛ばなかったら

 空のことはもっと

   判りにくい

         尭

 そして私の名前を見ると、始めに書いた犬塚さんの言葉を思い出す。

日時は何時かは分からないが、詩人の高木秋尾氏と一緒に犬塚さんのお宅を訪ねた時のことだ。
何故、高木氏と訪問する事になったのかと言うと、同人詩誌「風」(主宰 土橋治重)の会のときにお会いして訪問する話に為ったのだと思う。かって短い期間だが、この詩誌『風』に私が作品を発表していたからだ。
 今、手元にある詩集『折々折りの魔』の献辞示を眺めていると、どうして犬塚さんが、私にこの問いを問い質すのか、前後の事はすっかり忘れているのに、何故かあの質問だけは時折、思い出すのだ。


 地球を止めた事がありますか?


 はい、と私は答えた。


 かって中央公論社から文藝雑誌『海』が刊行されていて、或る時、フランスの作家、ル・クレジオのインタヴィュー記事が掲載されていた。
 その中で、真の革命とは、世界同時に意識が統一されること、と言うような趣旨のことを話した。
例として、切符切りが、靴磨きが、運転手等が仕事中に、なんでこんな事をしているのかと、世界で同時に考えた瞬間が起きた時が真の革命だ、と言うような事を言っていた事が常に頭の何処かに在った。

 それから何年後かは、もうはっきり覚えていないが、、或る夜、この水の惑星の全ての人の意識が止まった、と言うべきか、止めたと言うべきか、 はっきりと確信できた瞬間を覚えているので、はい、と即座に、返事をした。

 犬塚 尭さんは1963年9月に、詩人としては第19回 H氏賞を詩集『南極』で受賞して居られる詩人で、朝日新聞の要職にもついていた。また 詩集のタイトルのように南極越冬隊にも参加された経験を持っておられる。
 残念ながら、既に彼はこの世には居ない。

 もし、今、ご存命なら、なぜ、あの問いを私にされたのか、是非、お尋ねしてみたいものだ。

 天童さん、地球を止めた事がありますか?

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