仏文学者生田耕作が書いた「似非シュルレアリストの軌跡 ー瀧口修造ー」を読んで、本当に吃驚した!!!(1)
先日、YAHOOオークションで落札した仏文学者生田耕作の生田耕作評論集成 一 『超現実の方向へ』(奢バ都館刊 1991年)を繙いていて、「似非シュルレアリストの軌跡 -瀧口修造ー」の文章を読んで、足元を掬われて吹っ飛んでしまった!
戦中にあの高名な美術評論家・瀧口修造がこんな文章を書いていたなんて、全く知らなかったからだ。
大東亜戦争と美術 瀧口修造
-「生活美術」昭和十七年二月号掲載
昭和十六年十二月八日
畏(かしこ)くも宣戦の大詔を拝してから一箇月、私達はこの時ほどはげしく生動する歴史の時間を意識したことはなかった。この時ほどはげしくわが民族の純なる実在を認識したことはなかった。
大東亜戦争はかならず長期を覚悟しなければならぬとしても、そのいわゆる緒戦の瞬間的な段階において、すでに戦争の中核に突入したのであった。これはわが陸海軍の規模雄大果断神速な作戦としかもその適確な戦果とに負うものであることはいうまでもない。このように宣戦と同時に戦争が、忽如その決定的な意義と相貌とをまざまざと呈示しはじめたということは、赫々たる戦捷に裏づけられてこそであって、国民は心ゆくまでこの勝利を謳歌するとともに、陸海軍の生死を超絶した努力に対しては心からの感謝をささげなければならぬ。
しかしながらかかる軍事行動そのものも、戦いの現象としてのみ把握さるべきではなく、世界史的な展望のもとに着々すすめられていた。緻密周到な準備と計画とに基くものであり、それがまたわが民族および東亜諸民族の赴かざるを得なかった至上命令に一途邁進した結果にほかならぬということに、今さらのように想到されるのであって大東亜戦争は世界史的な規模における、しかも消耗戦破壊戦でなく生産戦、建設戦であるといわれているその本質が、緒戦早々、太平洋上にくちひろげられている壮大な戦闘絵巻のなかに、刻一刻と読みとる思いがするのである。
今夕、「世界を開く日本」と題して放送された平出海軍大佐の講演は、軍を代表して切々胸にせまるものがあったが、大佐は「この一箇月のうちに天下の形勢は百年以上の飛躍を遂げた」と言っていられる。この言葉は、もはや誇張でもなく、修辞でもなく、実感をもってせまるものがある。しかもこの言葉の背後には、今次の戦争が急転回のうちにあらわして来た、生産的、建設的な使命に私達がぴったり直面している事実が意味されていると思う。こうした戦争の本質と相貌とを確認しないで、目前の現象に興奮して終わるべき時ではないであろう。ことに文化の一翼にたずさわるものにとって、この点の洞察が一層深く要請されなければならぬ。
開戦以前には、時局便乗ということが一部で警戒されていた。しかし宣戦布告とどうじに、この言葉はどこかへ吹き飛んでしまったように感じとられる。うつくしい国民的な総親和力が、この種の間隙を一瞬にして埋めつくしてしまったのである。とはいえ、いまは感激や興奮のあまりに、戦争の表相だけに眩惑されて、文化の真の創造的役割を逸脱することを自戒すべき時に到達したのではなかろうか。
私に与えられた課題は、大東亜戦争と美術の影響というのであるが、もし影響ということを単なる現象的な反応の埒内だけで理解するとしたら、いまの段階はこの種の言葉ではつくし得ないほど切実な感動につつまれているといえよう。
卒直にいって、この感動こそおおらかに肯定すべき、不思議な光をもつわが民族の純粋さと若さとであるように思われる。そこから、あらゆる国民の職域と同じく美術人のよって立つべき大原則も覚悟も湧き上るものでなければならぬ。したがって大東亜戦争の理念である。大東亜共栄圏の確立というわが国有史以来の大事業を記念するような、真の戦争美術も遠からず実現されるであろうし、また実現させなければならぬのであるが、いまはこのことをあまりに狭い意味に局限して、戦争の起伏に対する心理的な乃至は神経的な反応だけに終わらしめたくないものである。あくまでおおらかな日本民族の理想と活力とを兼ね具えた、本質的な意味において記念すべきものに育てあげなければならぬ。(後略)
この文章を、あの詩人で美術評論家の瀧口修造が書いたとは、直ぐに信じられなかった。
こんな文章を瀧口修造が書いていた?
戦後の瀧口修造の仕事を知ってる人が読んだら引っくり返るほどの衝撃を受けるのではないだろうか。
雑誌の資料に関しては第一人者の笹木繁男氏に電話をして、尋ねてみた。
この文章を掲載された本が1991年に刊行された事は御存知無かったが、流石、この「生活美術」の文章は知っておられた。そして、日本美術情報センターが刊行している、「jaic」No,2(2005.12.30)に、「資料こぼれ話(2)」に瀧口修造の戦中時代の文章について、既に書かれている事を知った。
しかし、笹木さんもこの生田耕作の文章が1991年に刊行された本に掲載されていた事は、ご存じ無かった。
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